335:遺伝性のある眼疾患について

■遺伝性のある眼疾患

遺伝性の病気は、染色体になんらかの理由で異常が起こったり、遺伝子に欠陥があったりすることで親から子へと伝わるために起こります。
以下は代表的な遺伝性眼疾患になります。

・屈折異常
通常目に入ってきた光は、角膜、水晶体（レンズ）を通って屈折し、網膜（スクリーン）に像を結び、網膜でピントが合うように、水晶体の厚さを調節します。そして屈折した光が網膜上の一点に集まり、網膜上で像を結んでいる状態となり、「正視」となります。屈折異常は、網膜での水晶体のピントあわせがうまくいかずにおきる遠視、近視、乱視などの異常のことをいいます。
屈折異常は、眼鏡やコンタクトレンズを装用することで矯正することができます。

・斜視
斜視とは、両眼の視線が一点に向かずそれぞれが別の方向を向いている状態を指します。
斜視の種類には眼球の動きがほぼ正常であるのに、左右の視線がずれる共同性斜視や、眼球運動を支配する神経に異常があるとおこる麻痺性斜視などがあります。

・色覚異常
人間は網膜内に、錐体細胞と杆体細胞の2つを合わせた視細胞を持ち合わせています。
錐体細胞は赤錐体・緑錐体・青錐体と3種類あり、この3種類の組み合わせにより、私たちは様々な色を感じることができます。色覚異常はこの錐体細胞のいずれか、もしくは全てが欠損した不完全な状態で起こる色の感じ方のことをさします。色覚異常者が区別し難い色の組み合わせとして、赤と緑色、緑と茶色、橙色と黄緑、青と紫などがあります。
日本では男性の約20人に1人、女性では約500人に1人、全国だと300万人以上の色覚異常者がいるとされています。遺伝的なものが原因の先天性と、一般的に白内障、緑内障、網膜病変、視神経病変、大脳性病変、心因性要因、視覚中枢の加齢変化が原因の後天性があり、色覚異常の原因の多くが先天性のものです。

・先天性白内障
先天性白内障とは、生まれつき水晶体が濁っているために、外からの光が網膜に達せず視力の発達が妨げられる病気です。
先天性白内障の原因は、遺伝や子宮内感染が代表的です。
子宮内感染は、母親が妊娠中にかかった風疹によるものがよく知られており、妊娠3ヶ月までに感染した場合は、水晶体全体が白く濁る全白内障になってしまう可能性があると言われています。
成人に起こる白内障とは異なり、早期手術を行わなければ、弱視になってしまい、後で手術をしても視力が回復できなくなってしまいます。

・緑内障
緑内障とは、何らかの原因で視神経が障害され視野に欠損が出る病気で、眼圧の上昇がその病因の一つと言われています。遺伝性の緑内障は先天性緑内障と言われ、先天的に眼の構造に異常がある場合に発症します。眼球中の房水の排水溝にある前房隅角が発達異常を起こし、房水が流れる線維柱帯の機能が生まれつき低下しており、房水を排出する機能が悪くなり、著しい高眼圧となります。
新生児や乳幼児では牛眼（ぎゅうがん）ともいわれ、角膜径拡大、角膜混濁がみられたり、まぶしがったり、流涙や斜視で気づくこともあります。
また緑内障は、血縁関係のある家族、親戚などの緑内障の方がいると、そうでない方に比べて緑内障になる確率は高くなるといわれています。必ずしも発症するわけではありませんが、日本では40歳を越えると100人に3人は緑内障を発症するといわれており、決して珍しい病気ではありません。

・網膜色素変性
網膜色素変性は、眼の中で光を感じる組織である網膜に異常がみられる遺伝性の病気で、日本では人口10万人に対し18.7人の患者がいると推定されています。夜盲（やもう）、視野狭窄、視力低下が特徴的な症状です。
網膜色素変性症の頻度は通常4,000人から8,000人に一人と言われています。網膜色素変性症は遺伝子の変化でおこる病気ですが、実際には明らかに遺伝が認められる患者さんは全体の50％程度であとの50％では親族に誰も同じ病気の方がいないとされます。